改革の一歩 – Democracy –
土曜日に幕を閉じたチェコ議会選挙の投票率は、65,43%となりました。
(投票率過去最高は98年の76,41%)
『チェコ代議員議会(衆議院)選挙は、波乱万丈を経て既存の政権が滅びる結果となった。』
時代錯誤?
のような表現を用いましたが、「チェコにデモクラシー(民主政権)を!」という声が叫ばれていたため・・・つい!
トップのSpolu(スポル)野党連合がバビシュ首相率いるANO(アノ)党を微差で打ち破りました。
今回の選挙のキーワードといっても過言でないかと思いますが、私の耳(目)にはバビシュ(首相)と共産党を倒せ!が一番響きました。
そして、実際に共産党は代議院から追い出される結果となりました。また、バビシュ政権にて連立与党を組んでいた社会党も議席を失いました。
共産党においては、1921年に立ち上がって以来初。
社会党においては、1993年のチェコ共和国独立後初。
200人の議員の半数の顔ぶれが、がらっと変わるそうです。
あれ、チェコって民主主義じゃなかったの?とご心配いただくかもしれませんが・・・
これまでも間違いなく民主主義でした。
しかし、実業家のバビシュ首相には下記のような様々な疑惑が常に付きまとっていたため、国民から批判を浴びないことはない日々でした。
- 汚職疑惑
- EU補助金200万ユーロ(約2億5000万円)の不正受給疑惑
- コングロマリット(複合企業)のEUによる利益相反の調査
- パンドラ文書によって、フランスのリヴィエラに豪邸を購入していたことが投票開始数日前に判明
ここでまた、「東欧だもんね、やっぱり汚職は日常茶飯事・・・」というイメージを抱かれるかもしれませんが、腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index)をご覧いただくと、それほどひどい状況でもありません。(問題のない国上位にも全く君臨できていませんが。)
https://www.transparency.org/en/cpi/2020/index/nzl
また、細かいところで見ると、小国の不正受給問題と大国のそれとを比較してみると、各事件の金額が桁違いといったこともあるので、日本、ドイツ、アメリカといった国の不正・汚職疑惑などを数値で追っていると、チェコで騒がれている金額に(不適切な言い方ですが)さほど驚く必要がない時もあります。
選挙権のない日本人として、(いつも通り)客観的に様子を見ていたものの・・・少し胸にぐさっと刺さることもありました。
移民反対派の方々の意見です。
「移民」・・・、日本から見ると私は「海外在住者」=チェコ人から見ると「移民」なんですよね。
日本人の私個人に対してどうのこうのではなく、「移民」=「仕事を求めて、また政情不安な自国から逃れるために移住する(経済)難民」に対しての反対意見ですが、「チェコを守りたい」という気持ちは強く理解できるものの、景気が落ち込むと、外国人への風当たりが強くなるだろうなーなどと感じました。
また、日本人として見逃せないのが、日系チェコ人のご兄弟が揃って当選されたこと。
一人は、以前から代議院議会副議長を務められていた自由と直接民主主義(SPD)党首の岡村 富夫氏、そしてもう一人は兄の岡村Hayato氏。所属はキリスト教民主同盟=チェコスロバキア人民党(KDU–ČSL)。
ご兄弟と言えども、政党が異なれば政治的主張も全く異なります。
では、「まもなく新政権が立ち上がるの?これからが楽しみね!」おもいきや・・・
憲法に基づき、チェコの首相を任命することができるのはゼマン大統領ですが、以前から入退院を繰り返すほどのご容態。そして現在も入院中です。
選挙前には、「政党連合の党首を首相に任命する気はない。最も強い党の党首を首相に任命する。」と宣言されていました。
この主張に基づくと、Spolu野党連合の党首ではなく既存のバビシュ首相がこのまま後続できる形となりますが、本日の首相と大統領の会談において、結果は出なかったとのこと。
🔹
最後の私の懸念は・・・
選挙においては、中道右派のSpolu野党連合が救世主の役割を務めました。
しかし、「打倒、バビシュ政権!」をキーワードに『一緒に』(党の名称でもあるチェコ語で「スポル(Spolu)」)活動していた・・・だけではありませんが、元々、政策なども異なる部分が当然存在します。
そのため、連合を分解すると下記の三党が現れます。
- 市民民主党(ODS)
- キリスト教民主同盟=チェコスロバキア人民党(KDU–ČSL)
- 伝統・責任・繁栄 09(TOP 09)
そして、ここに連立政権を組まなければならないため、さらに「海賊党と無所属及び首長連合(STAN)」野党連合と組むことになります。
これだけ多数の政党がミクロ環境で存在する連立政権・・・、増税、国債、社会保障制度、移民かつ雇用対策、コロナ禍の政策など・・・明るい未来が確実に待っていない状況下でのスタート、すったもんだありそうだなぁと感じています。
チェコの政界はど素人の私が見ても「平和主義」ですので、最終的にはうまーくどこかに収まるようにできていますが、側から見ていておもしろいにしても、茶番劇は(経済の)命取りです。
SNSでもリアルでも、今年のクリスマスはいつもより懐が寂しいと嘆いている声が多く聞こえます。
また、ベルリン近郊のテスラ・ギガファクトリーにて年末には生産が開始される予定だということもあり、外国人労働者も含め、チェコの労働力の推移にも影響を多少は与えるでしょうし、テスラ車の欧州販売が促進されると、欧州メーカーとそのサプライヤーチェーンの状況が厳しくなるでしょう。
ちなみに、テスラ工場の設立に遅延が生じたのも、まだ生産許可が下りないのも、近隣の生態系を懸念したエコ団体の活動のため。
周辺には、絶滅の危機にあり蛇やコウモリが生息しているそうです。
なんだかこういったことからも、各国の特徴が掴めるような気がします。
それでは皆様、チェコの政権改革に負けず、輝かしい一週間のスタートを切れますように!
◎ドラマチックに進行を努めましたが、マサリク大統領、こちらでよろしかったでしょうか?(冒頭の写真)
チェコ選挙結果ニュース:(本サイトAktualne.czは何かとお勧めです。)
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