歴史と共に生きる
プラハは、ユネスコの世界遺産に登録されています。
ユネスコの登録制度や善し悪しについての議論は絶えないように思えます。
また、私がよく通っていたドイツの町ドレスデンには、抹消された遺産もあります。
歴史的な景観を守るか、住民や経済といった現代社会のニーズを優先するかどうかは、本当に難しいところです。
個人的には、熊野古道がユネスコに登録された時にがっかりした記憶があります。
有名になると観光客が増えますよね。
誰もいない古道を仲間だけで登ることはもうないのかなと寂しくなりました。
– History Makes You as Human & Heritage Makes You as Family –
さて、プラハはこじんまりとした愛らしい町だと感じますが、さらに建築好きの私にはネタの宝庫です。
中世の街並みやお城、教会・大聖堂といった歴史的建造物で溢れています。
今日はロマネスク建築に会いに行こう
久しぶりにキュービズム・カフェもいいかもしれない
建物なんて眺めていておもしろい?
と質問されることもありますが、おもしろいです!
歴史や過去の建築技術、現在の修繕方法や素材、所有者の変遷や維持費用、ハイテク活用など・・・気になる話題で盛り沢山。
さて、チェコにおける歴史的建造物の所有者は、国、市町村、カトリック教会、その他の個人・法人などです。
例えば、プラハで最も有名なプラハ城の敷地内に聳え立つ「聖ヴィート、聖ヴァーツラフ、聖ヴォイチェフ大聖堂」の所有権を巡って、およそ20年にわたり裁判が行われていました。
概要:
- 1992年にチェコ・カトリック教会のカーディナルが当該大聖堂の所有権を主張し、国に返還を求め訴訟を起こす。
- 2010年に、国とチェコ・カトリック教会が共同資産として管理することに合意。
- その後も、プラハ城敷地内のその他のチャペルなどを巡り、「教会への資産返還に関する法律」に基づき国と教会で協議が行われた。
※共産主義時代に国に権利を剥奪された資産を含め、このように所有者が不明瞭な不動産は今もよく見られます。
さて、本日はLinkedinを通して知り合った方主催のコンフェレンスに一部参加させていただきました。
その方は、「文化遺産協会」というNPO法人の代表およびファンドレイザーとしてご活躍されています。
ウェブサイトや雑誌などで、文化遺産の重要さや歴史的建造物の補修、国や地方行政からの資金調達、経験のある技師や工場(こうば)、補修・復元の実例・実績をとても見易くかつ分かり易くご紹介されています。
本日のコンファレンスでは、下記のテーマについて拝聴しました。
①文化遺産とメディア
「新聞記者や取材班の興味をそそるメールの書き方」を記者の方がご紹介。
SNSをはじめ、メディアの力を活用しクラファンや資金調達を達成できる時代です。具体的なノウハウを伝授されていました。
②歴史的写真の活用
http://www.seidel.cz/cz/museum_fotoatelier_seidel_cesky_krumlov/
20世紀前半に、主に建物の精密な写真を撮っていたチェコの写真家Josef Seidel氏の紹介。有名なシナゴーグをはじめとする様々な建造物が、この方のおかげで復元されました。
また、写真を元に3Dモデルを作成し、当時の街並みなどを再現することにも成功しています。
このような方々のおかげもあり、チェコにおける文化遺産が輝き続けているのでしょう。
不景気であれば文化予算が削られやすい傾向にあります。また、日本では、文化活動の支援においては都道府県により大きな差があることを、日本のとある文化協会の方から伺ったことがあります。
「投資」という言葉は、主に産業や個人の(有形無形)資産において用いられているように感じますが、自分とは直接関係がなくても、恩恵を受けているものもありますね。
社会への投資に役立てることができないかと、日本へ向けて情報を発信中です。