秘密保持契約(NDA)または裏技
経営者時代に気をつけていたことはたくさんありましたが、基本の基本だと考えていたのが契約書です。
何においても契約当事者の権利と義務は明確である必要があります。
成果物、検収、スケジュール、支払に関する規定といった当然の項目の他、特に重要なのが秘密保持条項(機密保持条項)。
英語では、「Non Disclosure Agreement」略してNDAと言います。
操業中には、企業間取引(B2B)の割合が業務の98%を占めていました。
そしてクライアントのほとんどは大企業でした。
秘密保持条項に関しては、各クライアントの要望に添える内容で問題がないかを弁護士にレビューしていただいていました。
(まずは自分でチェックし、その後弁護士がダブルチェック。)
過去を振り返ると、日系企業の要望に基づく秘密保持条項の内容はシンプルなものが多く、逆にチェコ企業からは「条項」では済まず、別書にて秘密保持契約書を締結するよう求められたことが多かったなと感じます。
小さな会社でしたので、正式に契約締結または注文承認に至るまでは業務を開始しないという手順は徹底していました。
とはいえ・・・「業務にしなくても良い案件」というのも時々発生します。
業務にしなくても良い案件?
お金になる仕事でも、「ここは無償で済ませておこう」という仕事です。
チェコの大企業(主に製造業)においては、小さな業務委託先であっても「オンライン・サプライヤー登録」が実施されます。
なんだか「部品メーカー」になったような(勘違いの)嬉しさを覚えたこともあります。
コンサル業務においては、事前に料金を確定することができないものもあるため、見積書にて単価(報酬/時間)と概算を設定します。
事前に30時間分予算を取り、月次レポートを添え毎月実動時間分を請求していくといった形です。
30時間を過ぎた場合にも何の問題もなく、追加で注文書を切ってもらうといった作業を繰り返します。
しかし、特に長年の付き合いになると、クライアントからは「コンサル料払いますよ」と事前に仰っていただけても、「この仕事は15分で片付けられるな・・・」といったものもあります。
そういった場合には、裏技を使います。
必要な情報を資料でいただかないことには、こちらも何とも言えないため、メールなどで関連書類や取引先とのメールなどをごそっと提供いただきます。
資料のボリュームが多くても、要点を読み取るのは速いため特に面倒なことはありません。
チェコ企業(クライアント)と日本の発注元やメーカーとの間で起こるどのような問題を裏技で対応させていただいているかというと・・・
齟齬、ごく普通のミスコミュニケーションです。
些細なことでも、どこで齟齬が発生したかを確認するには、注文書や技術書・仕様書なども含めて過去の経緯を教えていただくしかありません。口頭で伺うより、百聞は一見に如かず。
「ここ2週間揉めてる内容を15分で解決できるの?」と驚かれますが、齟齬は本当に些細なことから発生し、解決策の選択肢もほぼ一つか二つに限られるため、私としては逆に時間の掛けようがありません。
- クライアントの要望と齟齬発生要因を確認した後、日本の担当者の方に電話をかける☎︎ 5分
- クライアントに結果をメールで報告する📄 3分
- クライアントに、あまり文字として残さない方が良い内容を電話で補足説明として伝える☎︎ 10分(世間話込み)
上記のような対応を同月に繰返し求められるようでしたら請求書をポンと発行しますが、二週間に一度程度であれば無償の対応で全く問題がないと考えていました。
そして、最後に忘れてはならないこと。
請求書を発行しなくても良い
=実動時間などを証明する証憑は必要なく、一定期間資料を保管する必要もないため、受領した仕様書や技術書、社内・社外のコミュニケーションなどはなるべく早く削除します。
しかし、もし万が一そういったデータが悪用された場合には・・・
私は(会社として)一切責任を負う必要はありません。
報酬も頂かなければ、契約書がないので責任も負いません。
「小さな会社だからサイバー攻撃の対象になんてならないよ」といった時代ではないので、「とにかく不必要なデータを持たない」、「保管が必要なデータは外部からアクセスできないようにアーカイブに保存」をテキパキと実行していました。
機密保持条項に限らず簡単な守秘義務においても、契約上、業務完了後2、3年は効力を持つ規定になっていることもあり、データ管理には気を遣います。
また、裏技を用いることで得することも沢山あります。
恩を売る作戦です。
クライアントの方も恩を売られていることは理解されているので、「逆に何かできることがあれば、いつでも連絡ください」と仰っていただけます。
大体は、「今度工場見学させてください」とお願いしていました。
サービス業にも関わらず、現場にお邪魔させていただいて製造や製技のトップの方に隈なく案内していただける・・・これほど「ただより高いものはない!」。
そういえば、イオナイザ=静電気除去装置を通過した後も静電気を纏っている帯電性の強い人間のため、クリアするのに苦労したな・・・などと思い出しました。乾燥のチェコ、時々ですが冬場扉を触った瞬間などに、火花が散ることもあります。
チェコだけでなく、周辺国の工場も訪れてみたいものです。