給与
Namiko Sakamoto

世界遺産の街並みが続き音楽の都で有名なプラハでさえ、芸術文化活動従事者の給与が低いこと、ご存知でしたか?

チェコが文化的に豊かだと感じるのは、世界遺産に登録された街並みだけが理由ではありません。

1身近に文化を楽しむ、生活に取入れることができる。

2文化芸術活動に(何らかの形で)従事している人が多い。

といったことも挙げられます。

※首都プラハとその他の都市・地方によっても大きな差があります。

○ジャンルや主催者は多様ですが、国から個人のレベルにおいても美術館、博物館、劇場、コンサート、イベントといった催し物が年中多彩に繰り広げられています。

○料金が安い(お手頃価格)

しかし、「料金が安い」ということは、国といった何らかの機関から支給される補助金がなければ成り立たないことも意味します。

Namiko Sakamoto

知人のチェコ人の女の子は、幼稚園の頃からバレリーナを目指していました。

初めて話を伺った時、「すごい!私は高校生になっても何もしたいことが見つからなかったのに、5歳でもう目標を持っている!」と圧倒されたのを覚えています。

バレエのお稽古にピアノの練習、毎日盛り沢山のスケジュール。

時々家に遊びに来た時には、バレーやピアノを披露してくれました。

そして、高学年になってチェコ国民劇場のバレー団に無事所属。次のステップはコンセルヴァトワール(舞踊)の受験です!


さて、「国民劇場」と記載しましたが、あれ?と思われた方も多いのではないでしょうか。

「国立劇場」じゃないの?

歴史的背景から、国の所有であるという「国立」よりも、「チェコ国民」が自ら築き上げた劇場であることを強調する必要があります。

オーストリア=ハンガリー帝国時代に、チェコではドイツ語でしか劇が上演できませんでした。そこで、主にプラハ市民を中心とした国民が資金を集め(クラファンですね!)、チェコ語での上演許可を得て1881年にようやく完成!

およそ40年の長い道のりでした。

しかし、スメタナのリブシェ初演開幕後、最終仕上げのために閉鎖されていたのですが、火災に見舞われました。およそ50日間で資金を回収し、1833年に再び開演されました。

国民劇場は、チェコ人のアイデンティティの確立を象徴しています。

現在、国民劇場では、演劇・歌劇・バレエが上演されています。

友人・知人にも、国民劇場をはじめ、文化芸術活動に携っている方は非常に多いです。

しかし、「携っている」という微妙な表現を用いるにも理由があります。

給与がとても低いため、正規従業員として、特にプラハにおいて普通の生活を送れるほどの余裕はありません。

具体的な金額は控えますが、「スーパーの店員より少し上」と題したニュース記事が出ているぐらいです。

いや、オーケストラで演奏しているバイオリニストが、国民劇場のバレリーナがそんなわけはないでしょ!?と驚かれるかもしれませんが、事実です。

そのため、副業/兼業、その他の本業をお持ちの方が大部分です。

(もちろん中には、不動産収入があるため芸術活動に没頭できるといった方もいらっしゃるでしょう。)

こういった方々の給与が低いということを知ったのは、チェコ留学時代でしたが、実態を理解するまで長らく時間がかかりました。

「幼い時から一生かかって培ってきたタレントの評価(収入)がこれだと、やるせない気持ちになって続けられないのでは?」

そこで、優秀な方は海外に出る傾向にあります。

一例ですが、バレリーナの娘はロシアにいるのと伺うことも多いです。

(当然、チェコで活躍したいと願い国内に止まる方もいらっしゃいます。)

給与が低いのは、芸術文化関係者だけではありません。医療従事関係者、具体的には医師の給与も低い国です。

(大学病院のみに勤務されている医師の給与。ご自身でクリニックを経営していたり、病院/クリニックを掛け持ちされている方は対象外です。)

名誉ある仕事、華やかな仕事・・・見合った給与が得られない?

同じことをしていても、隣のドイツでは10倍近く稼げるのではないか?

このように、頭の中で論理的に結論を求めようよしても実態は変わりません。国民劇場の従業員(ダンサー、俳優、舞台関係者)の給与が低いからといって、国からの補助金が低いわけでもなく、ディレクターやマネージャーは高収入を得ていることが報道されています。

本記事にて、不平等を指摘したいのではありません。

良い物が安く手に入る時には、それなりの理由があります。

そこを意識すると、安くてありがたい!という感謝の気持ち以外にも、コロナ禍でより足を運んで投資しよう。クリスマスの寄付も良いなとどうやって還元できるかを考えるようになります。

「エンタメ」と題する投稿でも紹介しましたが、今の時代、娯楽なしに生きていける人はいません。

異様な時間を仕事に費やしていましたが、少なくとも月に数回は劇場やコンサートに足を運んでいました。

本を読むよりも好きでした。

文章を違った形で体現してくれる。

衣装に驚かされる、魅了される。

話し声や歌声が心に響く。

最新の舞台芸術・効果に感嘆の声を上げる。

自分ができないことを目で見て楽しませてもらい、そして、家族や友人と共にその後語り合っていました。

みんな就きたい仕事に就いて、満足いく給与を得て、皆で幸せに!

・・・と願いつつも、現実そうはいかないことを誰もが感じています。

芸術文化を満喫させてもらっているプラハ市民として、感謝の気持ちを込めて、早く日本を含め世界中からの観光客が戻ってきますように!

Namiko Sakamoto

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