IHOLー駐在員派遣の基本ー
Namiko Sakamoto

ノウハウ活用

役に立つのであればいくらでも使ってください!

といっても、この記事に目を通していただいて、スキームを完全に理解することはできないかと思います。

「あ、会計士が言っていたのはこういうことかー!」と途切れていた線が繋がれば光栄です。

移転価格問題も含め、大事なのは、問題を先送りせずに時間に余裕をもって対応すること。そうすることで、無駄な費用(特急料金)もストレスも抑えられますよ!

日本の親会社からチェコ子会社への駐在員派遣において利用されるスキーム「IHOL」。

International Hiring of Laboursについての正式な訳は見かけませんが、税務調査の資料を日本語へ訳す際には、「国際的な労働力派遣」と訳していました。 

なんのための法律?

なぜ親会社との出向契約のみでは問題なのか?

これまでにも数多くの質問が寄せられました。日系企業においては、ライン立ち上げ時にメーカーさんの従業員もチェコに送り出さなければいけないといった状況は発生しますが、ほぼ全てのケースが「企業内派遣」にあたります。親会社やグループ企業内からチェコ子会社への駐在員派遣。

その際には、どの企業も派遣料がゼロです。

※全給与・賞与をチェコ側が負担することや、ライセンス契約、技術支援費用が親会社から子会社に請求されるのが一般的なため、日本の親会社がわざわざ派遣料を請求する必要もないでしょう。

一方、多国籍企業においては、企業内派遣でないケースも多ければ、エージェンシーを通した(外国人)労働者派遣といったケースも多いですね。その際の給与の負担元、支払元、給与以外にも租税の負担元、その他発生する費用の負担元、派遣費用について・・・他企業同士の契約においては、細かな取決めが必要なことはご理解いただけるかと思います。

上記を前提にすると、日系企業の運営は至ってシンプルです。

概要:

1 チェコのIHOL(International Hiring-out of Labor)契約とは

 IHOL契約は、役務(労働力)の提供を目的とし締結される。派遣仲介が基本だが、親会社の従業員を海外の子会社に派遣し、派遣自体が利益を生むような仕組みでない場合にも適用される。

2 親会社(派遣元)と子会社(派遣先)の関係

 駐在員が、親会社のみと雇用契約を締結している場合、親会社は、従業員の法的雇用主(Legal Employer)であり、子会社は、駐在員(従業員)のみなし雇用者(Economic Employer)となる。親会社は子会社に労働力(IHOL)を提供することから、子会社にIHOL費用(給与、賞与、その他の費用など)を定期的に請求する。その一方、チェコで発生した駐在員の滞在に掛かる費用(人件費や宿泊費など)を、子会社は親会社に定期的に請求する。

※ 「IHOL費用=駐在員の滞在に掛かる費用」と設定した場合、当該者間で実際に支払いは発生せず、請求書のみが相殺される。

※どのような項目を費用として請求するかは任意(会計士などと要相談。現在は現地渡給与のみが主流。)

3 要点

・請求書の発行は月ベースが好ましいが、事務の煩雑化を防ぐため、四半期毎といったように請求対象期間を伸ばすことも可能。

・親会社は、IHOL費用請求書の内訳をチェコ子会社に提供する。

・駐在員は、税務上の観点からは現地従業員と同等にみなされる。子会社は、現地従業員と同様、駐在員の源泉徴収税(※月次仮払い所得税)を当該税務署に納める。また、駐在員に給与明細書を発行する。

※駐在員は、通常、毎年確定申告を実施する。(日本で別途、不定期に手当などが発生しない仕組みであれば、年末調整のみで済ますことも可能。)

親会社から請求されることが前提となっているIHOL費用や、IHOL契約に明確に記載されているチェコ子会社が負担すべきその他の費用は、チェコ子会社において損金算入が可能となる

・日チェコ社会保障協定に基づく証明書を駐在員が所持しない場合、子会社は駐在員の(チェコ法廷)健康保険料および社会保険料をチェコ当局に納める。(必ず証明書を取得されるため、支払いが発生することがないのが標準的。)

4 恒久的施設(PE)問題

  IHOL契約に基づき以下の条件を満たし駐在員派遣を実施する場合、

  1. チェコ子会社が駐在員の指揮監督を行う
  2. 駐在員がチェコ子会社の利益のために労働を提供する
  3. 労働力の提供(駐在員の派遣)に対し親会社が子会社に対価を求めない(手数料や報酬などを請求しない)

駐在員派遣が理由で、チェコにて恒久的施設の存在を認定されることはほぼありません。

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